天の審判者 <45.5>



何度、唇を重ね合わせたとしてもまだ足りない。離れたそばから、どちらからともなくまた重ね合わせる。
「……んっ…」
スーリャの唇から、くぐもった声がもれた。
シリスの手が衣の合わせ目から差し入れられ、彼の肌をさらりと撫でる。そのなめらかな感触にシリスの手は止まることなく胸の飾りにたどり着き、悪戯にそれをやんわりといじる。
撫でるような、揉むような、そんなシリスの動きがくすぐったいのか、スーリャが身をよじった。何度かその動作を繰り返す内に、赤いそれは硬くなり。

「んんっ……っ……な、に?」

スーリャを口付けから解放したシリスは、彼の上衣の紐を完全に解き、露わになった白い肌と赤い実の鮮やかな対比に笑みを浮かべた。
その片方をゆっくりと口に含んで舌で転がし、もう片方は手でもみしだく。
「ちょっ……シリス」
むず痒いような、背筋がさわさわするような妙な感覚に、スーリャは声を上げる。
それに構わずシリスの空いたもう一つの手がスーリャの身体の線をなぞり、下方へと降りていく。
わき腹をたどり、更に下へ。
下衣の上から、ゆるりと彼の分身を何度も撫でる。

「っ……」
緩慢なその動きにスーリャは焦らされ、
「………ッゃ…あっ」
舌で弄られていた赤い実を、突如カリッとかじられて、そこから生まれた背筋を通り抜ける甘い官能に悲鳴を上げた。
「スーリャは敏感だな」
スーリャの快楽に少し潤んだ瞳が、笑みを浮かべるシリスの顔をとらえる。情欲を含んだぞくりとするような笑みに、スーリャの心臓がよりいっそう早鐘を打った。
羞恥心で顔どころか、全身が真っ赤になりそうだった。



スーリャが気づいた時には、いつの間にか彼の衣はすべて脱がされていた。シリスも衣を脱ぎ、二人は裸でベッドの上に折り重なっている。
自分の分身に直に触れ、強弱をつけて扱くシリスの手によってもたらされる直接的な快楽に、スーリャは溺れた。
「…ん……んっ――はッ」
その口からは甘い喘ぎ声がもれ出す。
わずかに残る理性と羞恥心が、シリスの前にすべてをさらけ出すことを拒否し、声を抑えようとスーリャは唇を噛んだ。
それを見咎めて、シリスが手の動きを止める。

「噛むな。唇が傷つく」
その言葉にスーリャの潤んだ瞳が物言いたげにシリスを見つめた。
「何も恥ずかしがる必要はないさ。俺だって、ほら」
シリスはスーリャの手を取り、自分の胸へと当てた。余裕そうに見えたシリスから聞こえる心臓の音は、スーリャと変わらないぐらい早鐘を打っていた。
驚いたような表情を見せたスーリャに、シリスが苦笑する。
「これでも緊張しているんだ」
言葉と共に彼の分身をひときわ強く扱き上げた。
「ッ、あぁ――」
ふいを突かれ、強烈な射精感にスーリャがシリスの手に白濁を散らす。

「すべてをさらけ出したおまえが見たい」

息を整えている最中に耳元で囁かれた言葉。
それこそ、まさに腰にくる声とでもいうべきか。
低く艶のある声に、スーリャは再び中心に集まる熱を自覚せずにはいられなかった。



その後もスーリャはシリスに煽られ、散々焦らされた。
イキたいのにイカせてくれない。
あともう少し強い刺激があればという所で、やんわりとはぐらかされる。そんなことを繰り返し、わずかに残っていた理性も羞恥心も体内で渦巻く熱に溶かされてしまった。
「シ、リスっ……」
焦れてシリスの名を呼ぶが、彼はスーリャの望むものを与えてくれない。
シリスはベッドサイドから小さな小瓶を取り、器用に片手で蓋を開けた。
ほんのりと甘い匂いが二人を取り巻く。
シリスはスーリャのさらに奥まった部分に隠された秘部へと、指を滑らせる。やわやわと誰にも、自分でも触れたことのない部分を撫でられ、スーリャは反射的に身をよじろうとした。
けれど、それはシリスの身体に阻まれる。
繰り返される口付けと分身への刺激でスーリャの意識はそらされ―― 前戯によって滴った彼自身のものと香油の力を借りて、シリスの指が彼の中へとゆっくり入っていった。

「な、何?」
痛みはない。ただ、妙な異物感が絶えずスーリャを苛む。
自分の中を押し開き、抜けていく指の感触。
繰り返されるその動作に不安そうな声を出したスーリャに、シリスが安心させるように笑みを見せた。彼の指がスーリャを傷つけないようにゆっくりと、何かを探るように動いていたのだが――。
「………ッあ!」
ある一点にたどり着いた時、スーリャの嬌声が上がった。彼が自分の出した声に戸惑う間もなく、シリスの指がそこを集中的に責め始める。
「やぁ…あっ……あぁ」
絶え間なく零れる、スーリャの嬌声。

スーリャの秘部を責めるシリスの指は次第に増え、彼を受け入れる部分を慣らしていった。すうっと抜けたシリスの指にほっとすると同時に、スーリャは喪失感を抱く。体内に渦巻く熱は凝り、スーリャの中で荒れ狂っていた。
そこに熱い塊が押し当てられて、本能的な恐怖を感じてたスーリャがそれから逃れようとした。
「大丈夫だ。息を吐いて、力を抜け」
シリスの言葉に閉じていた目を開け、彼の表情を見て、なんとか身体の力を抜こうと息を吐き出した。

ゆっくりと中に押し入ってきた、指とは比べ物にならないそれの量感と熱さに、スーリャはうめきとも悲鳴ともつかない小さな声をもらす。
「……ッ……」
シリスもまた、息を詰める。
慣らしたとはいえ、それでもスーリャの中は狭い。だが、己を包み込む熱は強烈な快楽を生み、すべてをもっていかれそうだった。
このままいっきに貫き、想いのままに揺さぶりたい。
凶暴な考えに囚われかけ、自身を押し止めるようにスーリャに深く口付ける。
なるべくスーリャの身体に負担がかからないように、シリスはすべてを彼の中に収めることに意識を集中させた。

「大丈夫か?」
すべてを収め終えてもすぐには動かず、シリスはそのままの状態で気遣わしげにスーリャの髪を撫で問い掛ける。
痛い。苦しい。熱い。
どうにかなってしまいそうなほどの熱に犯され、それでも頷いたスーリャの眦から一粒の涙が零れ落ちた。それを唇で受け止め、シリスは萎れてしまったスーリャの分身に手を伸ばす。
強弱をつけ扱くうちに、それは硬さを取り戻していった。

シリスがゆっくりと腰を使い、ゆるく抜き差しを繰り返す。そうしながら彼はある一点を探していた。それを的確に突いた時。
「あッ」
スーリャの身体が跳ね、その口から嬌声が上がった。シリスの背中に回された指に力がこもる。
「やッ……シリ、ス…そこ、あぁッ」
いやらしく濡れた音を立てる秘部とスーリャの喘ぎ声がシリスを煽る。
シリスの動きに合わせて、狭い入口がヒクリヒクリと動く。内側の熱い襞が離さないとでも言いたげにまとわりつき、彼を締め付けた。
「ぅん………んあッ…ぁあ―――!」
限界が近づき、ひときわ激しく奥を突く。スーリャの意識が白むほどの快感に、内壁がシリスを強く締め付け、二人の間で擦られて果てた分身が勢いよくその腹に白濁をまき散らす。
力のこもった指がシリスの背を傷つけた。けれど、その痛みすら快感に変わる。
シリスもまた、抗いがたい快楽にのまれ――大きく腰をスライドさせ、己の欲望のままにより深くスーリャの中をえぐり、彼の最奥に激情を放ったのだった。



過ぎた快楽に気を失ったスーリャの頬をシリスは撫で、軽く口付ける。
彼の顔を見つめるシリスの瞳には、ようやく身も心も手に入れた愛しい存在に対する喜びと、今後を思っての憂いが映っていた。

「俺のすべてはおまえのために」

真摯に囁かれた言葉は、今のシリスが彼にできる精一杯の誓いだった。





*************************************************************
2007/01/07
修正 2012/02/05



back / novel / next


Copyright (C) 2006-2012 SAKAKI All Rights Reserved.